BVR
『正樹』
砲声やら着弾音やら兵器の巻き起こす轟音、更に前線から運ばれてきた負傷兵だろう。時折聞こえる叫び声や悲鳴に、何時しか数百人にまで膨れ上っていた避難者達は、身を寄せ合い、ひたすら祈る事しか出来ない。
「――な、なんで、まさか!」
「はい?」
先程から隣で、B5サイズの携帯端末機を操作していた矢沢が声をあげる。一般的な短距離での様々な規格の無線通信機能を持った物ではあるが、海外での圧倒的なシェアを誇る、初芝製のハイエンドモデルである。
「やっぱり! 電磁遮蔽板かネットでも使ってるんだ!」
「矢沢さん?」
その台詞からして、矢沢が他の荷物の状態を確認するために、通信状態の確認をしていたらしい。
「……畜生、奴ら、奴らウチの荷物を奪う気だ!」
それまでどこかオドオドとした印象だった矢沢とは、まるで別人を見る様だった。
どうやら間違いなさそうである。矢沢はどこかここ以外の場所に保管されているらしい何かとのネットワークを回復しようとしていたのだろう。それが上手くいかなくて取り乱しているのだ。
外で発生している爆発音やら発砲音やらは、既に全く聞こえていないらしい。
端末機を抱えて、しゃがみ込んだ人々の群れを掻き分けるようにして、今は既に閉じられているシャッター横の扉へと向かう矢沢。