Prologue
これで機体のふIFFが機能している限り、流れ弾や兆弾以外、味方の火器からの誤射はほとんどなくなる。狙って引き金を引いても、警告表示が出るだけで弾が出ないのだ。もちろん接続が切れていれば別だが……。
時折停止し、敵の配置と移動方向を確認しながら、時速五キロメートル程の速度で移動する。
一瞬だけ稼動中のターボファンエンジンの出力を最大にし、さらにアフターバーナーに点火して地雷原を飛び越える。
今の一瞬で僅かに余裕の生まれた残動力を確認し、再び省動力モードに切り替え、無音行動に移る。
木々を圧し折りながら着地し、再び敵状の確認。リコメンドはブースト機動、そしてアサルトライフルの掃射。しかし正樹の選択はクレイモア。気付かれた様子の無いことを確認し、通常機動モードに変更し、二〇メートルほど先に確認できた敵三メンズのチームらしい一団に接近する。
地雷原であることを承知で、後方で派手に暴れまわっているアーマーから逃げて来た連中ばかりだ。背後で暴れているアーマーと地雷、それから伏撃体制にある味方からの射撃。更には悲鳴や叫び声とともに、次々と仲間を失ってゆく恐怖と絶望でほとんど恐慌状態である。
機動歩兵の探知装置はそれなりに優秀ではあるが、この状況では、自身の出している音と発砲音や爆発音に紛れて、無音(圧搾空気のみで行動)状態を解除した、エアクッションをまとめて数百個も潰したような独特の排気音と、断続的な太鼓の様な音がする加圧缶(構造的にはロータリーエンジンである)の作動音を発生させているはずの、通常機動中のアーマーにすら気付かない。
密林の木々ごと切り裂かれ、叩き潰されてゆく機動歩兵達。
その大半の兵士達は、全長三メートルを超えるクレイモアの、巨大な刃をその身に受けるまで――いや、受けてなお、正樹の操るアーマーの存在には気付かない。