Prologue

『AE』(=Armored Exoskeleton system)

 ……ベネズエラに近い、コロンビアとブラジルの国境地帯で、正樹達の部隊が伏撃体制に入ってからおよそ四時間。
  情報が正しければ、そろそろ敵が現れてもおかしくない頃合いであった。

 肉眼ではほとんど何も見えない夜のジャングルに、いつの間にか小動物のざわめきと、小さな虫の声が戻って来ていた。

 正樹の機体は現在、偽装ネットを被り、浅く掘った穴の中にしゃがみ込んで、かつ半ば土に埋もれた状態である。
  この姿勢だと、正面からはステルス性の高い外装(レーダー波吸収構造、RASと呼ばれる)部分しか見えなくなるため、機体は電波反射源及び熱源としては、ほぼ完全に存在を消してしまえるようになる。
さらにここ数日間の激戦の結果として、無数の兵器の残骸が散乱しており、磁気探知機すら無力化しているはずであった。

 これならよほど至近距離でも発見される可能性は無い。(因みに専用のシールドを持てば、目の前にいてもレーダーには映らない)

 ほとんど全ての機能が待機状態に入っており、まるで戦闘機のコックピットのような印象を与える全周モニタはもちろん、あらゆる情報画面が消えている。

 作動しているのは、換気のための小さなエアコンと、本部中隊が管理している聴音情報と、機体が収集しているそれ、ようするに外の音を拾っているマイクとスピーカーだけだ。

 非常用の赤いLEDが一つ点灯しているだけだが、暗闇に慣れた目にはこれでも十分であった。

 因みに正樹はこの状態が嫌いではない。
 



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