Prologue

  射出座席に固定され、繭型のそこに座っていると、なぜか不思議と落ち着くのである。
  正樹は近頃、自分には母胎回帰願望とやらがあるのかもしれない、などと疑っている。
  もちろん誰にも話した事はなかったが……。

  不意に、待機状態にあった通信用の補助モニターが起動し、密林を背景に一人の男を映し出す。
  もちろん光ケーブルを利用した有線通信である。

“客が来た。準備はいいか?”

  何時聞いても実に綺麗なスペイン語だった。本来命令の伝達は英語で行われる事が多いのだが、時々部隊編成の都合上、こうしてスペイン語を使われることもあったのだ。
  特に最近はその傾向が多くなっている気がする正樹である。

「いつでも」

  “常時”を意味する単語で答える正樹。
  それは初めて単独で戦場に出て以来、英語だろうとスペイン語だろうと、毎回欠かさず使っている台詞である。

  他のパイロット達にも必ず一つ二つは有るであろう、験担ぎみたいなものである。

  正樹自身は指摘されるまで気付いてもなかったし、験担ぎのつもりもなかったのだが、指摘されてからもそれは続いていた。

  そんなパイロット達の心の動きなどお見通しなのだろう、男は黙って頷き、収集していた戦術情報を送信してくる。

  通信画面の奥に、完全武装の機動歩兵が幾人か見えた。
  戦闘開始を控えた、旅団司令部の慌ただしさが伝わってくる。




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