Minus 424
青い顔のまま歌うように告げる真央に、一気に脱力した様子のニナが匙と質問をまとめて放り投げる。
「――で? その人は何処の人? バリの色男? それとも日本人? ……まさかバンコクの男娼とか言わないでよ?」
「……違うわ、その人ね? 私の家からほんの三ブロック先に住んでる人なの。2万キロも離れた場所で出会った人が、こんなに近くで暮らしてたのよ? これは運命だわ!」
青い顔のまま、幸せを語る真央に全力で匙を投げつけるようにニナが答える。
「はいはい、もう結構よ、でもね? 運命なんて気安く言ったらダメよ?」
「なぜ?」
「なぜなら運命の女神は嫉妬深いから。……恋した時に『運命』って言葉は禁句なのよ? 知らないの?」
「嫉妬されたっていいわ、私、ジョンに逢えて、今凄く幸せなの」
もうニナには苦笑する事しかできない。
「ジョン……ねぇ?」
いつの間にか完全に立ち直り、冷たく見えるほど悠然とした、いつものニナに戻っている。
「……私、その名前を聞くだけで幸せよ」