Minus 424


  そう言って立ち上がったニナを、真央の真剣な瞳が追いかける。

「ニナ、私、産みたい――いえ、産むわ」

  真央を背に立ち上がったニナは、ため息を一つ吐いて何やら呟き、おもむろに振り返って続ける。

「それは何を言っても無駄って顔よね? でも、これだけは言っておくわ。子供を産むのは大変だけど難しくない、難しいのは育てる事と父親を維持する事よ」

  その言葉に何を思ったのか、にっこりと微笑む真央。
  ニナは説教でもするつもりだったのだろうが、真央の顔を見て言葉に詰まってしまう。

「いいわ、でもわかってるんでしょうね? ウチみたいなバイオ企業に妊婦はご法度よ? 今日はこのまま帰る事、まず検査して妊娠してたら、絶対にダンジョンには降りない事――」

  真央は再び真っ青になって黙り込んでしまう。

「…………貴女、まさかダンジョンに降りたりしてないわよね?」


  ――FD製薬の研究センターには、その性質上潜水艦と呼ばれる複数の隔離設備を始め、ありとあらゆる検査研究用の設備が揃っており、医療センターの設備も全米トップクラスといえる。
  各種感染症に対する備えも万全で、最悪のバイオハザードにも対応可能とされているのだが、もちろん最悪のバイオハザードへの対応策は唯一封鎖と隔離だけであるから、医療センターも地下の第一層にある。



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