Minus 424


  妊娠の可能性がある状態でダンジョンに降りたと報告を受けた担当医は、慌てて真央に着替えを命じ専用の医療用自動機械に放り込んだ。
  真央は唾液、血液はもちろん、ありとあらゆる体液の採取と、全身の表皮のサンプルを取られる事になってしまったのだ。
  途中で散々抗議するニナを、これまた専用の自動機械で追い払って、まさに問答無用であったが仕方ない。

  巨大な自動機械の中で一人になった真央は、たっぷり20分もかけて、全身を刺され、切られ、引っかかれ、こすられた。

  ……やっと解放してくれた自動機械の前で、薬液をかけられ、詰まった鼻に口をパクパクさせながら、綿棒状のもので突つかれたうえに目薬らしき液体を片目に入れられ、やたらにしみるその目を押さえてふらふらしていた真央は、まるで用済みだとでも言わんばかりの態度で、隔離施設の前にある簡易ベンチに追いやられた。

  誰1人通る事のない通路の突き当たりにある、不気味な鋼鉄の2重扉の前である。

  結局真央は、夕刻までそこにいた。
  待たされている間の全ての瞬間が、真央の精神に鑢でつけたような傷を残してゆく。

  座っているだけの無為な時間に、真央は為す術もなく、徹底的に痛めつけられたころ。
  件の担当医と人事の女性が姿を見せた。

  真央を近くの個室に案内すると席に座らせ、最初に口を開いたのは担当医の男だった。

「柳瀬真央さん、ですね?」

  ほぼ完璧な日本語の発音に少し驚くが、頷くだけの気力しか残っていなかった。




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