Minus 424


  全く今日はなんて日なの?
  天国から地獄って、こんな事をいう言葉なんだわ……。

「……ミス? 少し休まれますか? お疲れの様子ですが大丈夫ですか? ミス?」

  もちろん疲れたわ。本当に。こんな事になるなんて。

「ミス? ミス、こちらへ座って……」

  もう行くからいいわ。お願い。一人にして……。

  真央は自分の声が出ていない事に気付いていない。待たされていた後の展開が早すぎて、気持ちと思考がバラバラでつながっていないのだ。

「『嫌!』触らないで! ……ご、ごめんなさい、早く帰りたいの。メトロが来るでしょう?」

  主任のカードを下げた警備員は、真央の顔色の悪さを心配して椅子を勧めてくれただけなのだが、ハリネズミ状態の真央にはそれすら厭わしいのだ。

「しかし、顔色が……」

「荷物を持って行くならもう帰っていいんでしょう?」

「はい、しかしミス、かなり重い荷物ですから……」

「真央よ! ミスはもうたくさん。……このカードは捨ててしまっていいのね?」

  引き止める警備員を無理やり振り切り、奪うようにしてカードをポケットに入れ、今度こそメトロに向かう真央。

  これ以上何かに煩わされるのはもうたくさん。




拍手する