Minus 424
一拍後、一言も言わず並べられた書類から退社の手続き書類をとり、手早くサインする真央。
「大変けっこうです――」
とミセス・アッシャーが何やら続けていたが、無視してその場を立ち去る。
たったこれだけ――。
……私は一体なんだったの?
精神的にも肉体的にも最悪の状態の真央だったが、それでもなんとか気力を振り絞り、萎えそうになる足を叱咤して、決死の思いで一階のロビーに出る。
と、突然横から二人の警備員に行く手を塞がれる。
「恐れいりますがミス。携帯されています識別票のセキュリティ期限が切れています、申し訳ありませんが御一緒願えますか?」
既にミセス・アッシャーが手続きを終えたのだと悟り、気の遠くなるような怒りを再燃させるが、警備員は真央のセキュリティ期限切れの理由を知っているらしい。
なんとも申し訳なさそうな警備員の表情に、反論も抗議も無駄と判断して後に続く。
警備室には既に真央の私物がひと抱えほどの箱に詰め込まれて置いてあり、更に見た事も無い分厚い社用の便箋が用意されていたのに気付く。
つまり、私がサインする以前に準備が進められてたって事ね?
「これがあなたの私物だそうです、その、確認してこちらにサインを……」
言いながら受け取り書類にサインを促し、使い捨てのセキュリティカードを差し出して来る警備員。