Minus 426
「それは――……もしかして僕が裕福だって言った言葉を信じてなかったって事かな?」
ニヤリと笑って答えになっている様ないない様な答えを返すジョンに、真央は思わず声を荒らげてしまう。
「当たり前でしょう! 貴方はビジネスを口実に好きな国を適当に放浪してるだけの『スチャラカ』ビジネスマンそのままだったのよ?」
「スチャ……カ? ――でも当たりだよ、ドクター・ヤナセ。実際僕はそんなつもりで旅行してたんだからね?」
なぜが自慢げにのたまうジョンに対し、さらにヒートアップしてしまう真央。
「ならどうしてそんな人の言葉が信じられるのよ!」
「じゃあもしかして他の言葉も信じていないの?」
たたみかけるようなジョンの口調は真剣だったが、黙ってしまう真央を見て、その口元には悪戯っぽい笑みが浮かぶ。
「君に恋して――」
その先の言葉は、真央には必要なかった。
元から真央の気持ちは警戒水位を十メートルも超えた古いダムの様な状態で、今まで決壊していなかったのが奇跡なのだ。
真央はさっきからジョンが口を開く度に抱きしめたくて、その唇に触れたくて仕方がなかったのだから。
「ジョン!」
真央は両手でジョンの襟を掴み力任せに引き寄せ――。
「……会いたかったわ……」
……仰向けに倒れ込みつつキスをした。