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『正樹』

  正樹達にしばらく遅れて、数十名の人々がロビーを脱出して来た。
  中には勿論伊丹達の姿もある。

  正樹達二人を見つけた伊丹が、安心したような、なんとも嬉しげな笑みを浮かべて駆け寄って来た。

「柴崎君、坂下さんも、はぐれてなくて良かったよ、ロビーは今酷く混乱してるから――」

「君達! 団体行動をなんだと思ってるんだね!」

  伊丹さんの前に横から割り込む様にして来たのは――。

「誰?」

「高橋だ! 今は非常時なんだぞ、こんな時こそ一丸となって日本人としての見識――」

  ――付き合ってられるか。

  全身と瞳と表情でそれを伝えて、久美を振り返る正樹。

「とりあえず荷物を探そう?」

  さっさと歩き出す。
  背後から更に喚きたてる声が響いて来るが、こんな場所であれだけ喚いて見識も何もあったものではない。
  周辺の人々は高橋達を見つめて、何事かと目をまるくしているのだ。

「今の判断はなかなか良かったよ、ところで、この荷物はもしかして……?」




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