BVR
「了解、オルメカ。右翼の突入を――右翼突入を確認!」
“こちらも確認した、幸運を、ブラッディーマリー!”
「ラケシス“戦闘準備”を指示するまで機体左小指の制御を委任する。以後のトレースはスラスタ推力、二タップでアフターバーナー、両足首以下をスラスタの偏向制御に指定、回避と高度は委任する」
機体制御及び戦術を統括する主コンピューターへの指示を行い発進に備えて腰を落とす。
即座に小指と両足首にかかる負荷が変化した。
“ラケシス了解”
ディナと呼ばれた操縦者は同時に、残動力と兵装の再確認を、ほとんど無意識のうちに行っている。
ラケシスと呼ばれていた米クライスター社製装甲歩兵(30年式『MMA.Crossfire2』)は、硬質の悲鳴の様な吸排気音を響かせながら、背中の――超小型でありながら、最大推力が各18キロニュートンに達する高バイアス比の――ターボファンエンジン二発に点火し、同時に強力な水潤式ツインスクリュー圧縮機を作動させる。
JHMCS及び全周モニタの一部に表示されている、めまぐるしく変化する各種パラメーターを読み取りながら、発進のタイミングを計っていたらしいディナが再び口を開いた。
「――ありがとうオルメカ。ブラッディーマリー出ます!」
偏向スラスタからアフターバーナーの排気炎を迸らせながら、総装備重量一トンを軽く超える(半分以上が増加装甲、武器、装具、弾薬の重量である)高機動型アーマーが軽々と浮上、凄まじい勢いで加速し始める。