DEFCON 1


「良かった! 君達日本人だろう?」

  声をかけて来たのは三〇代前半だろうか?
  童顔に似合わない髭の男性である。襟と袖に色の付いたシャツに、ベストと蝶ネクタイと眼鏡。高そうだがヨレヨレになってしまったスーツと、未だ輝きを失わないドレスシューズとオメガの時計――。

「……外務省の人?」

  思わず正樹が尋ねると、大袈裟に驚き――。

「なんで知ってる?」

  と、肯定してくる。
  どうやら日本の外務省に存在すると言われる、裏ドレスコードの噂は本当らしい。

「なんとなく……?」

  あまりさまにならない出会いであったが、政府の役人がいるのは心強い。
  本来ペルーに赴任する予定だったというその男は、正樹達を前に自己陶酔気味に語りだす。

「でも今はとにかく、この地の邦人全員を無事に本国に連れ帰るのが僕の仕事さ……」


  正樹達は気付かなかったが、ここには他にも6人の日本人がいたのだ。

  ともかく、伊丹賢治と名乗る三等書記官――と言われてもどのくらい偉いのかはわからないが、意外と若いし多分エリートさんなんだろう――に連れられ、ロビーの片隅に集まっていた日本人だけで、名前と職業といった簡単な自己紹介を行う。


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