Prologue

  場違いなほど可愛らしい電子音と共に、戦術情報用にしてあった補助画面が起動した。

  本部中隊の情報チームが統括している戦術情報である。
  地雷原の向こうにばら撒いてきた無数の固定式集音器に、人工物の作動音が引っかかった事を教えてくれたのだ。

  普通に聴いても密林の雑音だけしか聞こえないが、本部がスクリーニングした音を聞けば一発でわかる。

  本来殆ど音をたてないはずの駆動装置も、工作過程がいい加減では意味がないし、手入れが悪ければ当然音が漏れる。
  この機体もそうした例の一つであった。
  恐らく破損した導管をそのまま放置している。密林の下生えを踏みしだく音に混じって空気の漏れる音がするのだ。
  情報では米国製らしいが、その粗雑な作動音は間違いないだろう。
  正樹が微かな嘲りの笑みを浮かべる。

  出力五パーセント低下ってところか? この連中はアーマーの出力が五パーセント低下した場合、それがどれほど巨大な損失になっているか気付いていないのだろう――いや、それとも補給と整備が間に合っていないのか?

  正樹の思考が巡る間に、スクリーニングされていない集音器から、不用意な人の声が聴こえてきた。
  ――ポルトガル語で交わされている兵士達の会話。

  ブラジル人兵士に間違いない。
  会話を捉えた集音器の位置を確認すると、敵は半月状に広がる地雷原のど真ん中に向かっているらしい。


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