Prologue


  移動中に動力を使い過ぎたのか?
  それともこちらにはアーマーが居ないと思ったのか?

  ミサイル攻撃のリコメンドが消えた。

距離四〇
  正樹は癖になっている動力残の確認。
  戦術コンピューターのリコメンド(装甲歩兵用アサルトライフルによる掃射)を無視して、背中のクレイモア(今も使われている旧式の対人地雷ではなく、タングステン合金の刀身と、「Y」字型に形成された単分子カーボンブレードを持つ両刃の大剣、段平とも呼ばれる。Yの上部、V字になった部分にクレイモアの刃を当て装着)を選択する。
  警告表示を無視。

距離一〇
  密林の下生えを透かして、排気炎の明かりに浮かび上がる黒い影。

  見えたっ! 二時方向!

  左手の姿勢制御で起き上がり、親指でブーストを選択、右の前進ペダルを踏み込み、両足のフックを僅かに引き上げつつ、同時にラダーを右に押し気味で右に旋回。

  機体は偽装ネットをそのままに、ブーストをかけて一瞬で接近する。
  敵パイロットに残された反応時間は一秒以下。

  正樹は胴体部分に照準を合わせたまま、右手のトリガー。ペダルはベタ踏みのまま、ラダーをめい一杯左に蹴り込んでゆく。

  機体のオートバランサーは正樹の狙い通り、完璧なタイミングで左足を踏み出し、残した右足から腰椎ユニットを軸に、凄まじい勢いで機体を回転させて、両手で握ったクレイモアを振り回す。
  その先端部からは、鞭を鳴らした時のような音――!



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