Minus 424
ニューサンディエゴ郊外
FD製薬研究開発センター
広大な敷地に比較して、地上四階建ての小さ過ぎるほどの建造物である。
しかし、地下には研究者達がダンジョンと呼び、この星に存在すらしなかった新種の微生物やキメラが生まれては消える、六層構造、地下二十八階のまさしく現代のダンジョン(地下牢の意味で)とも言うべき場所がある。
六層目にはLevel 4クラスの、社内規定でそれ以上に厳重な管理体制が敷かれた設備すら存在している。
真央は二層目、地下六階のLevel 1相当の管理設備が配置された一角で働いている。
扱っているのは環境対策資源もしくは建材資源と呼ばれる、自然界に普遍的に存在する微生物のキメラである。
真央は二年前に、日本の名古屋大学からカリフォルニア大学サンディエゴ校へ――もっともカリフォルニア大学で残っているのはサンディエゴ校だけだが――ポスドクとしてやって来た所を一本釣りされて此処にいる。
朝六時を過ぎたばかりだったが、主任のチャンは間違いなく居るはずだった。
チャンは何時も誰よりも早く研究室に入り、帰りは誰よりも後なのだ。
出会ったばかりの頃は、真央はチャンが研究室に住み込んでいるのだと信じていたくらいである。
およそ四十メートル四方はある研究室は弱陰圧構造になっており、幾つかの手順を踏んで、二重の気密扉を抜けなくては中に入れない。
もっとも、入ってしまえば中では比較的自由にできる。特に危険なものもないし、人や動物に感染するようなものも扱ってはいないのだ。