Minus 424
戦後日本は二十余年に渡って続く高度経済成長期に入ったばかりで、名古屋も十年でその景観を一変させていた。
長男が結婚し、真央が大学院に進んだ頃、急性の劇症白血病で母が亡くなった。
健康で気が強く、病気ひとつした事のなかった母は限界まで病院には行かず、検査を受けた時にはどんな治療も手遅れだった。
カリフォルニア大学での話しが来たとき、真央がその場で即答出来たのは、間違いなく母の死の影響がある。
なにより日本に未練は全くなかった、真央にとっての故郷はハワイでありサンディエゴであったのである。
年齢からは想像も出来ないほど老成した感のあるチャンだったが、東洋人らしく寝ている姿は年齢より遥かに若く見える。
コーヒーを入れてチャンを起こす真央。
「起きて? そろそろみんなが来るわよ?」
飛び起きて真央に気付いて微笑むチャン。
「――やあ、君か。相変わらず……全然気付かなかったよ」
ちょっぴり微笑む真央からコーヒーを受けとる。
「随分長い休暇だったね」
「あら、休暇は全部で三週間しか使ってないわよ? 後は指導と出向だもの」