Minus 426
彼との約束の時間は十八時……。
『いけない! もう五時半!』
と、真央が独りごちた瞬間玄関のチャイムが鳴り、ほとんど同時に壁の時計が鐘をひとつ鳴らす。
西暦二〇〇八年初頭に建てられたこの古いアパートメントには、まともな警備システムも無ければ、部屋の管理を任せる集中管理システムも無い。
来客時には覗き穴から直接目で確認する様になっているのだが、真央はこのアパートメントに入って以来一度も使った事はない。
ここでは誰かが誰かの部屋を訪ねてくる時には、誰かが必ずそれを見ているのだ。
時には真央自身が――。
真央はチャイムと同時に一瞬で模造刀を鞘に戻し、左手を腰に置いたまま、一気に扉を開いた。
「おっと、君には警戒心は無いのかい――」
と、扉の外に立っていた男はそこまで言って、真央が手にした刀に気付いたらしい。
「……あ、いや、それは警戒しすぎじゃないかな? 頼むから抜かないでくれよ?」
しかし、男の姿に、真央は唖然としたまま声も出ない。