Minus 426
「……もっともこのアパートメントならレストランの食事なんて目じゃないくらいの料理が、毎日味わえそうな気がするんだけど。……さあ! 着替えて! お腹が空いて倒れそうだよ! この香りがさっきから僕を飢餓状態に追い込もうとしてるぞ? ――下で待ってるから、早く僕を助けに来てくれ!」
言うだけいうと、真央の左の頬にキスをひとつ、オマケみたいに残して楽しそうなステップで階段を下りていってしまうジョン。
……また、エレベーターが故障してるのかしら?
呆然としている真央を、向かいの部屋に住むプログラマーのハリファ、通称ハルと、十六階に住むネットワーク技術者でハルの恋人のパウロが、二人でニヤニヤしながら見ているのに気が付く。
「真央ってば、やたらと毛並の良いのを捕まえたのね?」
「アレがマオの彼氏カイ? エミリオが泣くよ、アレじゃ敵わないよ?」
「真央? どうでも良いけど早く着替えたら?」
「ボクは気にしないケドネ?」
美しいインド式イントネーションの英国英語と、スパニッシュアメリカンイングリッシュでからかわれた真央は、やっと自分が右手に花束、左手に模造刀をぶら下げたまま、下着姿で立っているのに気が付いた。
しかも上は薄く汗を吸って肌に張り付いたTシャツ一枚に下は普段穿いてるボクサーショーツ一枚。
……いくらなんでもあんまりだ。