Minus 426

  少し長めの箱にはダイヤモンドとサファイアをあしらったプラチナのネックレスが輝き、慌てて開けた、少し小さめのお揃いの箱からは、ネックレスと同じデザインのピアス。
  更に一番小さな箱には、それまで一度も見たことが無いくらいの大きさの、ダイヤモンドのリングが一つ。
  サファイアの青は真央の瞳に、ダイヤモンドの輝きは透明感のある真央の肌に良く映えている。

  明らかに特別な品であるのはわかるが、わかるだけにパニックにならないように抑えるのが精一杯だった。

  全てに付いていた、高価な本物の紙の鑑定書――全て天然の結晶であることを証明するもの――を持ったまま、今度こそ腰が抜けた様になってベッドの縁に座り込んでしまった。

  これはドルで千や二千の世界ではない。
  宝石の価格については、本来カーボン(ダイヤモンド)だの酸化アルミニウム(ルビーやサファイア)だの、ごくごくありふれた物質であり、大戦中に崩壊した供給システムのおかげで、大幅に下落していた。
  が、同じ物質でも、人造ではない天然の結晶であることと、機械加工ではない、人の手による加工品である事、特に有名なデザイナー自らの研磨品であった場合など、その価格は以前にも増して天文学的な値になる事も多い。

  証明書の記載からして、明らかに一般の品とは桁が違うのだ。

  ……タイのバンコクで初めて会った時の彼は、商用で来たビジネスマンそのものだった。

  上等のスーツがピッタリと決まっていたのを覚えている。
  カフスやタイピン、それに時計や靴も、確かに高そうではあった。

  それにシンガポールで再会した時に、確かに自分は裕福な方だと言ってはいたが……。

  その時はアメリカ人らしい見栄だと思っていたのだ。
  これは真央の知っているジョンの印象とはあまりにも違い過ぎる。

  呆然としたまま日本語で呟く真央。

『ねぇアトム、どうすれば良いかしら……?』



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