Minus 426
窓から叫び、扉を開くと、ハルとパウロが先程と同じ場所で振り返る。
ハルのサリーが崩れて、口紅が落ちている。
パウロのスケベ! あら、でもパウロのボタンが外れてる? シャツとジーンズも! ハルってばっ! 部屋でしなさいよ!
――二人の目が真ん丸になっているのに気付く。
もちろん真央の姿にみとれているのだ。
「ハル、太郎に餌をお願い!」
「真央……?」
と、急いでいたのを思い出し、返事も聞かずに鍵を渡して、大急ぎで階段を駆け降りる。
これで最悪(?)今夜は帰れなくても――。
ひとまず安心だった。
いつでも真央が出かける時はハルが真央の太郎を、ハルが出かける時は真央がハルのラクシュミー、ハルの猫の面倒を見ているのだ。
もっとも、本当は猫の面倒くらいハルの自律機械は余裕でこなす。
ハルのはソニー製で『キュリオ・シリーズ』の名が冠されている最新型のハイエンドモデルなのだ。
因みにこのアパートメントで自律機械を持っているのは真央とハル、それからパウロの三人だけである。
あとは経済的、宗教的、信条的な理由で所持していない。
息を切らせて飛び出すと、外で待っていたのは八輪の巨大な白いリムジンだった。