Minus 426
ジョンの台詞に一瞬絶句してしまう真央だったが、口笛でも吹きかねない顔で2人のやりとりを見つめる運転手を見てなんとか気を取り直し、左手を差し出しながら答える。
「――あらジョン? 貴方は私の手を嫌いになってしまったの? 私の指は貴方の唇を未だ覚えているのに?」
運転手が思わず吹き出し、真央に向かってウィンクひとつ。
そ知らぬ顔で腰を落とし、真央の指先に口付けするジョン。
鈴なりのアパートメントの窓から、悲鳴の様な歓声と野次が飛び、口笛がいくつも鳴り響く。
ジョンに片手を預けたまま、一切何も聞こえない風を装いリムジンに乗り込む。
アパートメントに向かいガッツポーズをつけたジョンが、何やら慌てて乗り込んで、運転手が扉を閉める。
瞬間的に消え失せる外部の喧騒。
高出力の水素式のガスタービンエンジンを備えたリムジンは、その巨体には似合わぬほど微かな音と加速を与えられ、紙屑やら何やらが雪のように降り注ぐ中を動き始めた。
真央はその広いリムジンの内装に、半ば圧倒されつつも、険しすぎる程険しい顔でジョンを睨みつける。
「どうしたんだい真央? 何か怒っているの?」
「ええ、正解。いったいこれはどういう事なの?」