Minus 426

「ねぇジョン? その、本当に大丈夫なの?」

  何種類ものフルーツが盛られたタルトを一つだけ取った後、ジョンにこっそりと囁く真央。

「何がだい? そんな事より、そろそろ裸足になって走る準備をしてくれるかい?」

  値段は、由来となったヨーロッパの山に匹敵するはずのモンブラン、それを横から突き崩しながらのニヤニヤ笑い。
  真央の気持ちは最早完全にお見通しなのだ。

「……わかったわ。貴方はアメリカでも確かに裕福な方なのよね? それも極端に」

「僕なんて本当に大した事ないんだよ、フーチューン誌あたりが僕の名前を載せてくれる事は絶対ないだろうしね?」

  真央は呆れた様にしていたが、再び巡ってきたワゴンから、まるで呪文のような、半分も意味の解らないフランス語やらドイツ語だらけの説明を逐一聞きつつ、ビスキュイド・サヴォアにオペラにムラング・シャンティーと、迷った挙句フルーツいっぱいのパバナを手にした。
  真央は久しぶりに『別腹』の日本語を思い出していた。

  ……コーヒーはブルーマウンテンとキリマンジャロからブルーマウンテンを選択し、砂糖無しでホイップクリーム選んでいたのだが、味と香りを確かめただけで結局それ以上一滴も飲み込めなかった。

  それでも、真央が三年前の自分とコルセットに対し、密かに感謝したのは言うまでもない。




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